個人事業主の破産
近年、不況が続く中で経営に行き詰り、廃業をされる「個人事業主様」や「中小企業様」が増えております。
悪化した資金繰りを放置すると、ますます状況は悪化します。
債務の支払いが滞ると、債権者が少しでも債権を回収しようと、強引な取立行為に及ぶことも少なくありません。
また、少しでも資金繰りを、とヤミ金に手を出して、家族親戚を巻き込んでしまう被害に合われるケースもございます。
状況の回復の見込みが立たないのであれば、破産を選択して再出発を目指すことも有効な方法です。
場合によってはそれほど事態が深刻ではなく、債権者との話し合いや、民事再生の手続きが可能かもしれません。
資金繰りに行き詰まったら、まずは専門家にご相談ください。
法人と個人事業者の違い
法人とは、株式会社や合資・合名・合同会社、特例有限会社等の組織を法人といい、それに対し、それ以外の商号のない組織を個人事業主といいます。
個人事業主の一般的な具体例としては、大工の一人親方やフランチャイズ契約基づく代理店などがあげられます。
法人と個人事業者の手続きの違い
破産を申請する場合、法人と個人とでは手続きが異なります。
まず債務責任の所在が、個人の場合はご自身にかかりますが、法人の場合はあくまで法人の債務なので個人の義務ではなくなります。
法人の債務の支払義務が及ぶのは法人資産の範囲となり、代表者の個人財産にまで及ぶことはありません。
しかし、多くの場合、法人の債務について代表者やその家族、親族が保証人となっているのが現状です。
その場合は、会社が倒産となる前に債権者から請求を受けることになりますし、債務のために代表者が自宅などの不動産を担保に入れている場合は競売手続きをとられることもあります。
これらの請求を受けても支払不能という状態にある場合、法人とともに代表者や債務に関連している親族も一緒に、自己破産申し立てを考える必要があります。
その場合、連帯保証債務だけではなく、法人代表者個人の消費者金融や借入金、住宅ローンなどの固有債務も含むことになります。
一方、個人事業主の場合は通常の債務整理と同様になりますが、自己破産や民事再生の場合は確定申告書や経理資料も必要となります。
また、個人の破産の場合は、最終的には免責(借金の免除)を目指していくことになりますが、法人の破産の場合は、配当手続き等破産手続が終わると法人の消滅ということになる、という大きな違いがあります。
破産のメリット
破産を申し立てれば、事業主やご家族への直接の請求、取立行為はストップします。
また、従業員の方の給料や退職金などの労働債権を先に確保したり、事業主の財産のうち、一部を「自由財産拡張」として破産財団から除外し、事業者に残すことにより、権利を最大限保護することができます。
注意点
法人破産の場合、長崎地裁佐世保支部では原則として破産管財人をつける扱いとなっております。
その場合、管財費用として「申立の時点で」最低50万円~の予納金が、書類作成報酬とは別途必要となります。
また、法人と代表者の破産を同時に申請する場合は、予納金額も増えてまいります。
個人事業主の場合でも、管財費用の予納が必要な場合があります。
「そのようなお金があれば返済に充てる」という考えが多いでしょうし、それら費用がご用意できるうちに事業整理の決断をするのは困難だとは思いますが、早めの決断がより速い再出発につながります。
どうぞお早目にご検討・ご相談ください。
※司法書士法における業務範囲外の案件につきましては、弁護士をご紹介させていただきます。